ロビーの手前に辿り着くと、宮部くんがさっと壁に身を隠し、そーっと顔を出してあたりの様子を伺った。

「どうしたの?」

「いや、ホテルを出てくとこ、先生に見つかったらヤバいと思ってさ」

「そ、そうだよね」

「でも、誰もいないみたい。先生たちも、自分の部屋でくつろいでるってことかな」

「そう、かもね」

「あとは、あのフロント係だけか。……ごめん。なんかヘンなことに付き合わせて。神崎、ヤだよな。見つかったら怒られるようなことするの」

 宮部くんが、申し訳なさそうに眉尻を下げる。

「ううん! だって……せっかくの修学旅行だしっ」


 たしかに、普段のわたしだったら、こんな冒険みたいなことは絶対にしない。

 でも、宮部くんと二人でこんなドッキドキの思い出が作れるなんて、夢みたいだから。

 それに、こうやってわたしの気持ちまでちゃんと考えてくれる宮部のことが——やっぱり好きだから。

 少しでも長く一緒にいたいって思っちゃう。