好きな人と一緒に告白現場に遭遇しました。

 きゅっと宮部くんのTシャツの裾を掴むと、宮部くんが足を止める。


「待って」

「神崎?」


 宮部くんがわたしの方を振り返る気配に、思わず顔を伏せる。


「待って……」


 言わなきゃって思うのに、やっぱり『好き』の気持ちが言葉になってくれない。


「あのさ、俺の勘違いじゃなかったら……ぎゅってしてもいい?」


 最後の一言に、ドキンっと心臓が小さく飛び跳ねる。

 だけど、いなくなってほしくなくて、宮部くんのTシャツの裾をぎゅっと握りしめたまま。


「イヤだったら、全力で突き飛ばしてくれていいから」


 わたしの手からそっとTシャツの裾を抜き取ると、ゆっくりと宮部くんが近づいてくる。


「ほんと、イヤだったら、全力で逃げてくれよな? 犯罪者にだけはなりたくないから、俺」


 もう一度宮部くんが言う声がして、わたしは顔をうつむかせたままほんの少しだけ横に振った。


「神崎。俺と、付き合ってください」


 今度は小さく首を縦に振ると、ふわりと温かな熱に体が包み込まれた。

 わたしと同じホテルの石鹸のニオイに混じって、宮部くんのニオイが鼻をかすめる。


「きっとずっと忘れないよ。この星空を——神崎と一緒に見たこと」



(了)