好きな人と一緒に告白現場に遭遇しました。

 宮部くんの方を振り返ると、真剣な眼差しで、わたしのことをじっと見つめている。


「俺の……初恋なんだ、神崎のこと。一年生の頃から、ずっと気になってた。いっつも一生懸命練習してる姿見て、俺もがんばろうって思って、どんどんうまくなってくの見て、うれしくなって。うまくできなくて、何度も同じとこ練習してるの見て、またがんばってるなーって。……って、これ俺大丈夫? ストーカーっぽいこと言ってね?」


 予想外の展開に、頭が全然追いつかない。

 ねえ、それって……。


「だからっ、とにかく……神崎のことが俺、ずっと好きなんだ。だから、さっき廊下で会ったときも神様にありがとうって何度も言ったし、ムリやりこんなとこまで引っ張ってきて、一緒にいる時間引き延ばしたりして……でも、なかなか言う勇気出なくて。なんか神崎よくわかんないけど怒りだすし、今自分でなに言ってるかも正直半分くらいわかってないんだけど……とにかく神崎のことが好きってことだけは伝えたくて」

「……」


『わたしも』って言いたいのに、声がどうしても出てくれない。


「……ごめんな。こんなほとんどしゃべったこともないヤツに、一方的に好きだとか言われても困るよな。忘れてくれても……いいから」


 そう言って瞳を伏せると、とぼとぼとホテルに向かって歩きだそうとする宮部くん。


「……待って」