はぁ、はぁ、はぁ……。

 そんなに走ったわけでもないのに、心臓はバクバクするし、呼吸も苦しい。

「『だるまさんが転んだ』みたいだったな」

 宮部くんも、笑いながらはぁはぁ言っている。

「うわっ、見て——」

 笑いながら上を見上げた宮部くんが、途中で言葉を飲み込んで、静かに空を見上げる。

「ほんとだ——すごい」

 見渡すかぎりの星空に、わたしも思わず息を呑んだ。


 今日の宿は、市街地から少し離れた、自然豊かな山あいの場所に立つホテル。

 街灯や照明がほとんどなく、街中ではなかなか見えないような小さな星までチカチカと瞬いているのが見える。


「いっつも真っ暗になるまで練習してるけど、空見上げても、絶対こんなに見えないもんなー。でも、これからは空見上げるたびに、この星空を思い出しそうな気がするわ」


 星空と一緒に、わたしのことも少しでもいいから思い出してほしいな——なんて、いつもなら絶対に思わないようなことを考えてしまう自分自身にびっくりして、また心臓の鼓動が速くなる。