「玲さんのこと、よく分かってるんですよね。玲さんが絶対楓さんとはそうならない、って思ったんでしょう?」

「それはそうですね! 玲はそこまでアホじゃないって思ったんです。あれだけ楓さんを拒否していたのに、体だけ、なんて。玲はしないよなって、すぐに思いました」

 私がそう答えると、玲はいくぶんか穏やかな表情になった。そしてこちらを見て、はにかんで笑う。

「まあ、合ってるよ。さすがだな」

 その嬉しそうな顔を見て、つい固まってしまった。普段の憎たらしい感じとは違って、どこか褒められた子供のような顔だったからだ。自然と、鼓動が速くなった。こんな顔、はじめて見た。

「今日の食事会も想像以上の働きぶりだ。疲れただろ、ゆっくり休め」

「私もだけど、玲もだよ。今日はちゃんと寝なよ」

「……うん」

 そんな会話をしつつ、私たちを乗せた車は、いつもの家へと向かっていった。