三日後。

 畑山さんに勉強を詰め込まれて頭がパンクしそうな私の元に、玲が何かを持って帰ってきた。『お前に』と差し出してきた紙袋はブランドもので、てっきりまた服か小物を買ってきたのだと思った。

 だが開いてみると違った。上品なストールと共に入っていたのは、白い封筒だった。中身を開いてみると、丁寧な文字でぎっしり文が書いてあった。

 送り主は、あの喉にブドウを詰まらせた少女の母親のようだった。あの後女の子は無事回復していること、命を助けてくれて本当に感謝していると、と書かれていたのだ。そして、私と玲の結婚を心から応援する、何かあれば力にあるから連絡をしてほしいとあった。読んですぐに、私は変な声をあげながら立ち上がり、

「玲! こんなこと書いてある!!」

 便箋を震える手で玲に差し出した。彼は何が書いてあったのか大体予想していようで、にやりと笑った。

「相手は規模もそこそこある会社、吉岡だ。仲良くなっておいて損はない、味方は一人でも多い方が絶対にいい。色んな情報も手に入るしな」

「応援してますって言ってくれた!」

「お前が頑張ったところをちゃんと見てる人たちもいたって言っただろ。あれ以降仕事相手に言われることもあった、周りの評価は上々だ。皆感心してた」

「よ、よかった……」

 私は便箋を握りしめた。大失敗だって思ってたけど、玲が言ったようにちゃんと見てる人もいたんだ。あの時咄嗟に体が動いてよかった、と思った。あの子も元気に過ごしているらしいし、いいことずくめではないか。

 あの時は冷たい視線につい怯えてしまったけれど、まだまだ大丈夫。私はこのまま頑張るしかない。
 
 私は強く拳を握りしめる。

「よし、明日からまた頑張る!」