「言ってみたけど俺の言葉よりあの女のぶりっ子を信じてる。俺の親に取り入るのが上手くてな」

「…………ええ」

 普通、息子の言葉より他人を信じるなんてありえるだろうか? 気づいていたけれど、勝手に結婚相手を決めたというし、玲の両親は中々酷い人たちだ。今日会ったのを思い出してみても、厳格そうな人たちだった。でも、パワーバランスは母親の方が強そうな感じが……。

「まあとりあえず、第一段階は終わった。これからだ」

 玲は足を組み替えてそう言った。そしてなぜか面白そうに口角を上げて笑っている。私は不安しかないのだが、なぜこの男は楽しそうなのだろう。

「玲、私今日色々やらかしちゃったし、今後大丈夫かな?」

「やらかしてない。見てろ、きっと今日頑張った成果をすぐに感じるはずだ」

「ええ……?」

「舞香は引き続き勉強を頑張れ、今度は知識の方だな。放っておいても、親たちは向こうから動いてくれる。しばらくしたらきっと何か声を掛けてくるはずだから、待っとけ」

 玲は涼しい顔でそう言った。私は不安でしょうがない顔をしており、二人とも対照的な表情だった。