「よし」

「あ、ありがとう」

「うん、サイズはいいな。あとは……」

 私を上から下まで見た彼は、何やら不満そうに私を見ている。やはり高級ワンピースに、すっぴんとボサボサの髪じゃ釣り合ってないだろうか。玲は一つ息を吐くと言った。

「まあ、いい。明日外出先で全部揃えよう。ほら、ファスナー下ろすぞ」

「そこお世辞でも可愛いとか言うところじゃない? 圭吾さんなら言ってくれそうなのに」

「俺は正直者なんだよ。圭吾は五割ぐらい大げさに言うからな」

 そう言いつつ彼はファスナーを一気に下まで下ろした。私は叫び声を上げる。

「ぎゃあああ! ちょっと、そんな下まで下ろさなくていいから!」

「おま……中に着てるインナーも穴開いてんじゃん……」

「見るな変態、セクハラ! この性悪男!」

 私は叫びながら慌てて寝室に走り出す。なぜか背後で玲が笑っている声が聞こえた。信じられない、本当に全く女扱いしてないではないか。私にゾッコンな男を演じるはずなのに、これでは先が思いやられる。

 クローゼットまで戻り、そそくさと服を着替えた。まあ、サイズは合っていることが分かったのでいい。ただ、明日の朝も玲にファスナーを上げてもらわねばならないのが億劫だ。

 げんなりしながらもう寝ようと思い寝室へ足を動かした時、ふとずっと使っていない自分のカバンが目に入った。奥底にしまいこんだままで、中にはスマホが入っている。あの日以来電源を入れていない。一応外出できるほどレベルアップしたということで、勇太に一通ラインでも送ってみるか。

 ブラコン上等の自分はウキウキしながら久しぶりに立ち上げた。悲しいことに勇太以外から連絡は来ていなかったが許容範囲だ。私は未読になっている勇太からのメッセージを読み、一瞬で目が点になった。