玲は椅子にもたれかかりながら不思議そうに私を見下ろしている。

「まあ外見は思ったより普通の女になってて驚いたけど」

「え、外見までゴリラになってるかと思ってたの? 私の小学生時代そんなゴリラ顔だった?」

「てゆうか生まれてこの方『モテないでしょ』なんて言われたの初めてだ。大概『モテるでしょ』って聞かれて、『ははは、そんなことないですよ』って思ってもない謙遜を言うまでがセット」

「思ってもない謙遜」

「舞香はモテないのは分かってるけど」

「ちょお! 聞き捨てならん、私だってそこそこだよそこそこ! そりゃ貧乏だけどまあまあ可愛いし白衣の天使だしモテるに決まってるでしょうが!」

「モテてたくせに行きついた先が二股男か」

 ぐうの音も出ない。

 私は頬を膨らませて視線を逸らした。玲はなぜか小さく笑っている。

 すっかり記憶から抹消されていた和人という男。落ち込む暇もなかったからしょうがない。二股掛けられて振られたという事実より、三千万の借金が現れたことの方がずっと大きかったのだ。

 私は口を尖らせながら言った。

「まあ、見る目がなかったのは確かかな。玲もそれだけモテるっていうなら二股ぐらいかけるだろうねー圭吾さんはそんなことしなさそうだけど。そういうのを見極めなきゃだな」

 そう言うと、玲がすっと私の顔を覗きこんだ。間近に顔が現れて、ついどきりとした。彼は性格に似合わず、案外綺麗な顔をしている。