圭吾さんは常に玲と一緒にいる、兄弟のような人だ。秘書でもあり世話係でもある。誰よりも信頼を置ける人だけど、それでも傍から見れば男性だ。何かが起こることは間違いなくないけれど、二人きりで夜遅くまで過ごすのはよくないと思う。
 
 そりゃ見てる人もいないだろうし、玲も圭吾さん相手じゃ気にしないだろうから、私が考えすぎだとは思うけど。でも、玲の妻として最後まで振舞いたい。

 私のセリフを聞くと、彼はにっこりと笑った。

「さすがだな、という感じですね舞香さん」

「まあ、もう夫婦じゃなくなるかもですが……」

「僕を母親じゃなくて男と思ってくれてるのも嬉しいですね」

 そう言うと圭吾さんが立ちあがる。そして私に微笑みかけた。

「何かあればすぐに連絡ください。飛んできますから」

「……はい、ありがとうございます」

「そろそろ玲さんも連絡つくと思います。ちゃんと話してくださいね」

 強く頷いた。私たちは話さなければならないことがたくさんある。

 圭吾さんをそのまま見送り、一人部屋に残った。元々広くて自分には合ってないと思っていた部屋だけど、なお広く感じた。

 既読にならないメッセージを見て、不安で溢れかえる。

 どうしてこんな時に限って近くにいないんだろう。

 私と彼はどうなってしまうのか。