「すみません、私あまりテレビも雑誌も見なくて」

「まあいい。お前俺が何も目的なく金出したと思ってんの?」

 腕を組んで見下される。その言葉を聞いて、やはりか、と思う。そりゃそうだ、どこの人間が見知らぬ人に三千万貸すっていうんだ。同情だけでは成り立たない。

 それはそうだと思うが、果たして向こうのメリットは何だろう。こんなド貧乏な家に恩を売って何かあるのだろうか。

 首を傾げる私に、二階堂さんが小さく笑った。そしてそのまましゃがみ込み、私の視線に合わせる。至近距離で見るその顔立ちはやっぱり綺麗で、こんな時だというのに少しだけドキッとしてしまう。

「服部舞香、お前に頼みたい仕事がある」

「仕事? というか、私の名前をどこで?」

 疑問で頭がいっぱいになっている私をよそに、二階堂さんは意味深な笑みを浮かべた。そして、信じられない言葉を発したのだ。

「俺と結婚しろ」