目の前に本人がいると知ったらどう思うだろう。

 ひとしきり驚いた後に、黙っていたことを怒られてしまいそうだ。

 けれど、仲のいい土井ちゃんにも私が【linK】であることは知られたくない。

 どうしても。

 【linK】に憧れを抱いている分、その正体を知ったらがっかりするだろう。

 私はなんてことないどこにでもいる女子高校生だ。

 学校でも特に目立たないし、家ではあの有り様。

 きっと私は一生、自分が【linK】だと公言しないだろう。

 皆の思い描く【linK】を壊したくない。

 がっかりされたくない。

 私はずっと一人で歌うと決めたのだ。

 チャイムが鳴り担任の教師が教室に入ってくる。その後ろに、見知らぬ生徒が続いた。

 視界に入るのは大きな体と、キラキラ輝くような人懐っこい笑顔。

 雰囲気が男にも女にもモテると言っている。

 そんな男子が黒板の前に立つ。

 教師に連れられて来る理由はひとつしか思いつかない。

 教室がざわつく。転校生だと誰かが呟いた。