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 義父に連れられ着いたのはこじんまりとした串カツ屋だった。

 義父は母の凝った手料理とワインを好んでいる印象が強かったため、慣れたように串カツをオーダーするその様子に戸惑いを隠せない。

「お母さんのおしゃれな料理も好きだけど、たまに食べたくなるんだよな」

 そう言って生ビールに喉を鳴らす義父に、ぽかんと口を開ける私。

「リンカ、これうまいぞ!」

「うぐっ」

 適応力の高い沢里はすでに串をおいしそうに頬張っており、私の開いている口につくね串を突っ込んでくる。

 なぜ義父と沢里と一緒に串料理を食しているのか。

 言われたとおりにつくねを咀嚼(そしゃく)すると、じわっと染み出す肉汁が口いっぱいに広がり、思わず目を細めた。

「おいしい」

 空腹を自覚した途端、きゅうとお腹が鳴った。「腹減ってたのか」なんてからかう沢里の腕を抓り、大皿に盛られた串にかぶりつく。

 そんな私たちをいつものにこにこ顔で見ていた義父は、ふと沢里のギターに目をやった。