その顔を見て、しまったと心の中で悔いた。

 電話口では思わず弱音を吐いてしまったが、情けない姿を見せるべきではなかった。

 沢里は【linK】のファンなのだから、がっかりするだろう。

 その考えを肯定するように沢里は立ち上がってどこかへ行ってしまった。

 やってしまった。私の考えはいつも浅い。悪い方へと転がっていくのを止められない。 

 【linK】のファンを一人減らしてしまった。

 やはり【linK】でない私には誰も興味を持ってはくれないのだ。

 ぎゅっと目を閉じてその事実に耐えていると、突然顔に冷たいものが当たり全身が跳ね上がる。

「ひえっ!?」

「はは、これで手冷やしときな」

 目の前には手に缶ジュースを持って戻ってきた沢里がいつもの笑顔を浮かべていた。

 自動販売機でわざわざ買ってくれたのだ。見捨てられたわけではなかった。

 差し出されるがままに冷えた缶を受け取ると、安堵で両目からぼたぼたと涙が落ちてくる。

 沢里はあたふたと慌てながらまた隣に座って、私の泣き顔をじっと覗き込んで言った。

「な、そんなに泣くなって。誰だって喧嘩くらいするさ。見ず知らずの人に殴りかかったわけじゃないんだろ? 俺も友達と殴り合いになったことあるよ。結構手が痛いんだよなーあれ」