コツーンと綺麗な音を立てて、私の手からペンが転がり落ちた。
それを拾うこともできない。
衝撃的な勘違いに思考回路が停止する。時が止まってしまったかのようにその場が静まり返った。
透流さんはあのファミレスでの光景を見て、男女の修羅場だと勘違いしてしまったのだ。
脳内は混乱を極め、なにをどう言えばいいのかさっぱり分からない。
「柾輝くんは実の兄です」と言えば、せっかく母に黙ってくれるというのに、真偽を確認されてしまうかもしれない。
憐れむような透流さんの視線を、ただただ冷や汗をかきながら受け止める。
「ふ、ふられてないです……」
限界を迎えた思考回路ではまるで強がっているようにしか聞こえない言い訳しか出てこなかった。
