両親の目を盗んで夜出歩き、年上の派手な男と食事をしていたなんて透流さんの嫌がりそうなことだ。

 てっきり長時間責め立てられるかと思いきや、むしろ口調がいつもより優しい気がする。

「お母さんには黙っていてくれますか」

「もうしないと約束するなら」

 さらになんと信じられないことに、母にも黙っていてくれるという。

 私の言い訳を聞くだけ聞いたらチクられるに違いないと覚悟さえ決めていたというのに。

「あのう、もしかして体調でも悪いんですか?」

 いつものちくちくねちねち嫌味のフルコースはどうしてしまったのだろう。

 私の言わんとすることを察したらしい透流さんは盛大にため息を吐いた。

「泣いていただろう、君」

「あ」

「その……つまり、あの時凛夏ちゃんは……振られたんだろう? あいつに」