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「ここの訳が間違ってるよ。be動詞が省略されてるから気を付けて」

「はい」

「スペルミスが中々なくならないな」

「すみません」

「あとこの前の男の話だけど」

「ぶっ」

 相変わらず気の重い透流さんとの勉強中、唐突にぶち込まれたのはだんまりを決め込んでいたファミレスでの出来事の話だった。

 あれから一週間、できるだけ透流さんと二人になるのを避けていたこともあり追及を受けずにいられたが、それもここまでのようだ。

 私はがくりと肩を落として、襲いくる罵詈雑言に耐える心構えをする。

 しかし待っていたのは以外にも平静な声だった。

「人の交友関係に口を出すつもりはないけれど」

「はあ……」

「夜に一人で繁華街に行くのは良くない」

「はい……」

「外食がしたかったら僕に声をかけるように」

「いやそれは結構です」と心の中で断りを入れつつ、透流さんの様子に違和感を抱く。