感情を取り戻したらしい沢里はテーピングを巻かれた私の手を見つめ、触れようとして止まる。

 そのさまよう指をじっと見つめていると悔しそうに俯いてしまった。

「俺のせいだ。リンカがどう思われるかちゃんと考えなかったからこうなった。本当にごめん」

「沢里……」

「もうこんなことが起きないように考えて行動する。だから……その」

「沢里のせいじゃないよ」

 あの時土井ちゃんになんと言われて駆けつけてくれたのかは知らないが、怪我をしたのは私がぼんやりしていたからだ。

 そして地面に転がったままでいたのは考え事をしていたからだ。

「でも指が。リンカの指は特別な指なのに」

「特別?」

「曲を弾く大切な指。だからお詫びになにかしたいんだ。なんでも言ってほしい」

 音楽家の命とも言える指に傷を負ったことを気にしているらしい。

 口惜しそうに拳を握る姿に、私は逡巡した。

 気にすることはない、爪くらいすぐに治る。そう断ろうとして思い立つ。

 もしも立場が逆で、私が沢里の指を傷つける一因になってしまったら?

 とても気にする。かなり気にする。それこそ沢里みたいな顔をするに違いない。

 謝っても謝っても気が済まないかもしれない。

 どうにかして私も沢里もすっきりとする方法はないだろうか。

 うんうん唸りながら考え、ひとつ解決法が浮かぶ。