「凛夏!」
世界が反転する。悲痛な声で名前を呼ばれのろのろと顔を上げると、目に涙をいっぱいにためた土井ちゃんの顔のどアップが映る。
「ごめん遅くなって。急いで呼びに行ったんだけど一歩遅かった、ごめんね。まさか殴られたの?」
「ううん、もう全部面倒臭くなって寝てるだけ。あ、土井ちゃんこれイヤホン」
守り抜いた土井ちゃんイヤホンをそっと手渡す。
ぺしゃりと力が抜けたままの私の体をやんわりと起こしながら、土井ちゃんはなぜか謝っていた。土井ちゃんはなにも悪くない。そう言おうとしてもうひとつの人影に気付く。
「リンカ……」
「あ」
呆然と私の有り様を見降ろしているのは、見たことのない顔をした沢里だった。
