「もう沢里くんに近づくなよ」
「なんか体調悪いとか言ってたし、今日はもう良くない?」
「行こ行こ」
手を押さえてピクリとも動かない私を気味が悪いと思ったのか、先輩たちの声は遠ざかって行った。
さわさわと緑の揺れる音と地面に踊る木漏れ日の中、私は目を閉じてその場に寝転んだ。
土の匂いをこんなにそばに感じたのはいつ以来だろう。
父がまだ生きていた頃、泥だらけになりながら公園ではしゃいでいた記憶が蘇る。
父は私たちが遊ぶ姿を見つめながら、よくギターを弾いていた。少し切なくて、おしゃれなコードを。
こんな時でも音は降ってくる。思考回路とは別の領域で、音楽が構築されていく。
父の好きだったコードはなんという名前だっただろうか。音は思い出せるのに、言葉が出てこない。
