「質問が漠然としているけれど……そうだね、例えば僕たちの話だとしよう。お互い連れ子同士、気を使うこともあるけれど同じ時を過ごしていくうちに本当の家族になれると僕は思うんだ」

「透流さん……」

 僕たちの話、そう言われ心が読まれているかと思った。私もまさに、今の家族を当てはめて考えていたからだ。

「だから、『家族になる』という結果を得るための過程として『時間』はとても重要だ。凛夏ちゃんはどう思う?」

 そう言って透流さんはペンを握る私の手にそっと自分の手を重ねる。

 一瞬ぎくりとしたが、家族になろうとしてくれているその気持ちを無下にしたくはなかった。

「あ……ええと、私もそう思います」

「よかった。僕だけが凛夏ちゃんともっと仲良くなりたいと思っているんじゃないかと心配だったんだ。凛夏ちゃんはまだどこか、僕に対して壁を作っているだろう。遠慮せず本当の兄だと思ってくれていいんだよ」

 撫でるような声に私はこくこくと頷く。

 透流さんには申し訳ないが、私は仲良くなりたいとは思っていなかった。

 どんなに優しい言葉をかけられても、その目は私を観察している。一挙手一投足を注意深く見られているような居心地の悪さはどうしても拭えない。

「さあ、勉強を続けよう」

「は、はい」

 自然と肩に置かれる手にぞわりとしながら、私は大声を出しながら暴れまわりたい気持ちをなんとか押し殺して下手くそに笑うのであった。