「私に構わないでさっきの先輩たちと仲良くしていればいいじゃん。せっかく誘ってくれてるんだし」

 投げやりにそんなことを言ってやると、沢里は眉を下げ困ったように笑う。

「あの人たちは俺じゃなくて、俺のステータスに興味があるんだ」

「ステータス?」

「俺の父親。……ちょっと有名なアーティストなんだ。俺も小さい頃から楽器教え込まれて、演奏したりしてる。けど……どこにいても親の名前が付いて回る。どんな演奏をしても、どんな歌を歌っても。親の情報がどこかから漏れちゃってさ。ああいう人たちは本当の俺じゃなくて、有名人の子どもっていうステータスに興味があるんだよ」

 どうやら美奈の言っていた噂は本当だったようだ。

 しかし噂の本人は困っている、というより迷惑。そんな風に思っているのが言葉の端々からにじみ出ている。

 その気持ちを上手く読み取れずにいると、沢里はまた元の笑顔に戻った。