殺されるかと思った。女子の殺気を体中に浴びてしまった。
ぷるぷると体を震わせていると事の元凶がカラリとした笑顔を向けてくる。
「いやー助かった! サンキュー、リンカ」
「馬鹿! どうしてくれるのよ私完全に目付けられちゃったじゃない! 自分に寄ってくる女の子くらい自分で対処してよ!」
最悪なことが続くと人は叫び疲れてしまうということを身を以て知った。
相変わらず目を合わせると首が痛い。
ぜえぜえと荒い呼吸をする私の肩に、沢里の手がポンと乗る。
「うんうん、怒ってる声も好きだなあ」
「ヒトの話聞いてる!?」
「でも叫びすぎると喉痛めるからほどほどにな」
「誰のせいよ…………最悪、曲も飛んじゃったし。はあ、もう用はないでしょ。さようなら」
「待って、一緒に歌わせてほしい! です!」
かみ合わない言葉の応酬に疲れその場を離れようとすると、目の前の男はまた昨日と同じことを言いだした。
「【linK】のことは言わないから! あ、本当に。脅しとかじゃなくて!」
「まあそのことはぜひ黙っていてほしいけど……」
どうやら【linK】についての口止めは必要ないらしい。
言う人は口止めをしても言うだろうし、言わない人は言わない。こうなったら後者であることを祈るしかない。
