「沢里くん足速―い」

「ねーカラオケ行こうよっ」

「てかその子だれ?」

 三人に矢継ぎ早に迫られる沢里に腕を掴まれたままの私は、なすすべもなく成り行きを見守る。

 ひしひしとした嫌な予感に(さいな)まれながら。

「すんません、帰りはこいつと約束してるんで」

「ちょっと!?」

 これほどまでに嫌な予感が的中したことがあっただろうか! 

 あろうことか女子の誘いを断るダシにされたのだ。

 三人組の強烈な視線に射抜かれ、私は石像のように動けなくなる。

「ふーんそっかあ」

「じゃあ今日は仕方がないね」

「また今度ね沢里くん」

 人を品定めするような目で私の全身を見回してから、三人組は元来た道を戻っていく。