ドップラー効果。音は空気の振動回数で音程が変わるという。
虚空を見つめながらそんなことを考えているうちに、声の持ち主――沢里があっという間に眼前に現れた。
「はあっはあっ。ごめんおまたせ!」
「はい?」
まるで私との待ち合わせに遅れたように詫びる沢里。
もちろんそんな約束をした覚えはない。
肩で息をしながら手を合わせる理由の見当もつかない。
しかし沢里に遅れて数人の女子がこちらに向かって駆けてくるのを見て、ピンときてしまう。
関わりたくない。そう思い踵を返そうとした瞬間に、その動きを予知していたかのように沢里に腕を掴まれる。
はなして、という私の懇願は追い付いたキラキラ系女子三人組の声にかき消された。
全員うちの高校の制服を着ているが見たことがないので先輩かもしれない。
