「顔バレはしたくないんだろ? 変なアンチに(とつ)られても困るしな。口止めはしろ。分かったな」

「うん」

 柾輝くんの言葉は不思議だ。どれだけきつく言われてもすとんと胸に落ちる。

 それはきっと、本当の私をちゃんと見てくれているからだと思う。

 だから私もなんでも話せてしまう。

 柾輝くんだけが私の理解者で、本当の家族なのだ。

 通話を終えるといつの間にか胸がすっきりしていた。この状態なら透流さんとの勉強も頑張れそうだ。

 レンガ道をローファーで軽く跳ねる。夕日が薄い雲の隙間を通り抜け、いくつもの光のシャワーのように降り注いでいた。

 あ、いい感じ。

 頭の中で音と歌詞が重なる。普段使っていない脳の機能が動き始めるような感覚。

 【linK】の一番いい状態になりかけていたその時、遠くの波の音をかき消すような大音量が近づいてきた。

「リンカーーーー!!」

 空気が揺れるほどの大声は、間違いなく私の名前を呼んでいた。