「美奈ってば、聞いてる?」

 耳触りのいい声が私を呼ぶ。

 顔を上げると相変わらず化粧けのない顔がこちらを覗き込んでいた。

「買いたいものがあるって言ったの美奈でしょ。なに買うの?」

 五十嵐凛夏はじれたように考え事にふけっていた私を急かす。

 私はなんだかむかついてそのポニーテールを引っ張ってやった。

「いった!」

「今日はあんたのメイク道具買いに来たの! いつまでもすっぴんで舞台上がるなんて許されるわけないでしょ」

「美奈が選んだらケバくなる……」

「はったおすわよ」

 五十嵐凛夏が大嫌いだった。

 それでも今は友人であることを望んだ結果、こうしてともに過ごしている。