【linK】の音楽はなにもない私の心に寄り添ってくれる。

 本当の自分が分からなくて周りに流されるだけの私にも優しく響く。

 私も【linK】のように人に寄り添える人間になりたい。

 そう思える歌声だった。

 だからライブで五十嵐凛夏が【linK】の歌を歌い出した時、私は私の思考の全てが無駄なものであったことに気付いたのだった。

 いけすかない、いらいらする、そんなのは当然だった。

 五十嵐凛夏は【linK】という世界を創り上げていたからだ。

 私には到底できないことをやっていた。

 だから思いどおりにならなくて当たり前だった。

 私なんかよりもより強い意志で五十嵐凛夏はそこに立って歌っていた。

 夜なべして作ったクマのぬいぐるみが「馬鹿はお前だ」と喋り出す。

 五十嵐凛夏が気に喰わないと思ったのはなぜだったか。

 第一に、私は「自分の世界」を持っている彼女が羨ましかった。だから私は――