気心が知れた親友のサポートを受けながら仕事ができる充実感。
私は幸せ者だ。歌を本業とできるだけでも嬉しいのに。
「【haru.】はなにしてるの?」
土井ちゃんの質問に首を傾げる。
うとうとする前までは側にいたはずだ。
「散歩とか?」
「えー、すぐいなくなるんだから!」
沢里は全国ツアーが始まってからどうも落ち着きがない。
デビューからの目標だった全国ツアーに手が届き浮かれていたかと思えば、次の目標を聞かれるとそわそわしていたり。
こっそりなにかを調べているとバレているのに内容は教えてくれなかったり。
要は行動が怪しいのだ。
「まさか……浮気?」
「それだけはないと思う」
名探偵土井ちゃんの言うことを信じるとしても最近の沢里がおかしいことは事実だった。
歌に影響が出ないといいのだけれど。
プロとして歌うことになったのだから。
ライブ本番には沢里は戻ってきた。
どこに行っていたかは教えてくれない。
普段隠し事はしないタイプなのでなんだかもやもやする。
予定通りステージに立ち、ともに歌う。ツアーで何度も歌ってきた曲だ。
いつもどおりに全力で歌い、最高のパフォーマンスを観客に見せるのが私たちの仕事。
しかし今日は少し予定が狂った。