「だからこれからもよろしくね」と続けようとしたのに、勢いよく沢里の体が目の前に迫ってきてそのままぎゅうぎゅうに抱きしめられてしまったので言えなかった。

「俺の方がリンカのこと百倍好きだから!!」

「もう、そこ張り合わないでよ」

「ずっと好き! 今までもこれからも!」

「分かった分かった」

「分かってない!! リンカは全然分かってない!」

 わーわー喚く沢里に抱きしめられていると、たくさんの音が聞こえてくる。

 私たちの逸る心臓の音に合わせて、少しずつ構築される世界。

 私たちにしか表現できない音楽がそこにあった。

「待って! 今いい音降ってきた! メモさせてメモ」

「このタイミングで!? リンカの馬鹿! 音楽オタク!」

「沢里に言われたくないんですけど!」

 そんな言い合いをしても私と沢里は離れないまま、きっとこれからも一緒に歌う。

 次に作る曲は恋をテーマにでもしてみようか。音楽が繋いだ二人の、ありふれた恋の歌だ。







(了)