もう声も思い出せないが、向こうはもしかしたらどこかで私の声を聞いているかもしれない。

 彼は自分の気持ちを伝えただけだった。

 私もまた、正直に自分の気持ちを言った。

 その時に限っては、どちらも悪くなかった。

 あんなに苦しめられたのに、今ならそう思える。

 あの頃は私も彼も周囲もピリピリしていて、異常だった。

 その中で潰し合う形になってしまったのは、誰のせいでもない。

 恨みも怒りも音楽に昇華する。そしてまた新しい音が生まれるから。

「もう大丈夫だよ」

 自分で言ったその言葉が、不思議な力を持っている気がした。

 ああ私はもう大丈夫なんだ。

 時間がかかってしまったが、ようやく納得できた。

 彼女たちと全国優勝したかった。

 その気持ちもまた本物だったのだから。