「凛夏が音楽続けててよかった」
「え?」
なにを言われてもいいように心構えをしていたのに、予期せぬ言葉がかけられた。
「凛夏、もう歌うの嫌になっちゃったかと思ってた。だって、最後の舞台があんな風に……」
「私たちずっと、凛夏に謝りたくて。凛夏はなにも悪くなかったのに、部が上手くいかないのを凛夏のせいにして、だから……」
「ごめんっ!!」
そんな風に思われていたとは知らなかった。
今日、ここで会わなければ一生知らなかった。
彼女たちはずっと恨んでいると思っていた。
全国の舞台を台無しにした私のことを。
次々に頭を下げる同期たちに、私は閉ざしていた気持ちを打ち明ける。
「当時は正直きつかった。誰も味方がいなくて、歌うのが辛かった……でもいいの、もう。苦しかったけど、私はもう別の場所で歌える。歌うのが好きだし、曲作るのも好きだから」
それを聞いた彼女たちは少しだけ硬い表情を緩めた。
「あのさ、」と同期の一人が切り出す。
「あいつ――元部長ね、今はどこか遠くの高校に行ったって聞いたから、もう気にすることないと思う」
「一応教えとく」と言う彼女に無言で頷いた。
