先ほど聞いたばかりのその台詞に、私はげっそりとしながら首を振る。

「えー嘘。だっていきなり仲良さそうじゃん」

「でも凛夏は全然知らないんだって」

「ふーん?」

 土井ちゃんがフォローしてくれるが、美奈は腑に落ちないらしい。たまご焼きを飲みこむのに必死な私をじっと見つめてくる。

「なんだ、友達なら取り持ってもらおうと思ったのに」

「え……もう好きになったの? 早くない?」

「実はね、別高の子に聞いたんだけど」

 美奈はその派手な顔を私たちに寄せて、声を潜めて言った。

「沢里くん、有名人の息子なんだって。イケメンだし、お近づきになりたいじゃん?」

 それは果たして「好きになったの?」という問いかけに対する答えになるのだろうか。

 複雑な顔をしているであろう私のポニーテールをつついて美奈は去って行った。