「リンカ? 顔怖いぞ」
沢里に突っ込まれ、私は慌てて顔を揉む。
今は昔とは違う、沢里が居てくれるのだから。
いくらあの時を思い出そうが、絶好調の私たちはもう止まらない。
「大丈夫か?」
「驚くほど大丈夫」
悪夢の終わりはあっけない。
自分でも醒めたことに気が付かないくらいに。
いつの間にか悪夢は沢里と一緒に見る夢にかき消されてしまった。
「長い夢だったな」
私の呟きに沢里は首を傾げていた。
何組かが歌い終えた頃、太陽は真上に位置してさんさんと光を降らせていた。
私と沢里は目と目を合わせて頷く。
「【linK & haru.】、スタンバイお願いします」
スタッフの声に返事をして、舞台裏へと向かう。
その際に柾輝くんがそっと席を外すのが見えた。きっと客席側から見守ってくれるのだろう。
「よし、行こう」
「ああ!」
沢里と拳を合わせて、静かに息を吸う。
ついにここまで来た。
絶対にできないと思っていた。
もう二人なら何も怖くない。
