君の隣で歌いたい。

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「さあ今年も夏を迎えるためのステージが始まります! Sawa Sonicここに開幕―!」

 司会者のスタート宣言にわっと歓声が上がる。

 私たちは控え室に残ってスマホで中継を観ながら、会場の人の多さに圧倒されていた。

「すごい……! こんなに人が集まるんだね」

「ああ、いよいよ始まりだ!」

 司会者のあいさつもそこそこに、早速一番目の演奏者が舞台に上がる。

 ハイテンポな曲が響き渡り、ただひたすらに会場の熱気が伝わってきた。

 控え室で待機するアーティストたちもどこかテンションが上がっている気がする。

 もう一度スマホに目を落とし、客席を注視する。

 チケットを渡した人たちは、前の方の招待席に座っているはずだ。

 残念ながら中継では確認できないが、誘った全員がそこに座っていることを信じたい。

 祈るように手を合わせ、その時を待つ。

 沢里はイヤホンをしてひたすらに音を確認している。

 名前を呼ばれるまで心を平静に保つのは難しいし、その方法は人それぞれだ。

 時々体が固まらないように肩をたたき合ったり、軽くストレッチをする。

 合唱部の仲間とも本番前によくやっていた。

 思い出すのは全国の舞台、悪夢の始まりの日。