君の隣で歌いたい。



「じゃあMVP狙っちゃったりするの? だったらライバルね」

「MVP?」

 首を傾げると柾輝くんが呆れたように説明してくれる。

「今日の出演者の中からMVPに選ばれたアーティストはsawaさんにプロデュースしてもらえるんだよ」

「そうなんだ」

「そうなんだってお前……」

 がっくりと肩を落とす柾輝くんの背をお仲間がぽんぽんと叩いている。

 そんな反応をされても知らなかったものは知らなかったのだから仕方がない。

 それにしても嬉しい。

 胸が躍る、ワクワクする。柾輝くんの歌を聴ける、沢里と一緒に歌う姿を、一歩踏み出した私の歌を聴いてもらえるのだ。

 ふと柾輝くんの目が私の後ろでじっと黙っている沢里を捉えた。

 そういえば沢里をほったらかしにしていた。はっとして沢里の腕を取り、柾輝くんの前に連れ出す。

「あ、紹介するね。こっちが……」

「お前が【haru.】か」

 柾輝くんの問いに沢里は神妙な顔で頷く。