「よろしくお願いします!」

 忙しなく動いているスタッフさんにあいさつし、指示どおりの場所で声を出す。

 私も沢里も普段と同じ声を出せている。

 このまま楽器と合わせることができれば大丈夫だ。

 指は散々車の中で動かしてきたので温まっている。

 そうこうしているうちにリハーサルを始めると言われ、私たちはすぐに舞台裏に移動した。

「緊張してる?」

「考えてる暇ないかも」

「当日ってこんなに忙しいんだな」

 薄暗い舞台裏に着いてすぐに入場と退場の段取りを教わり、すぐにマイクテストが始まる。

 二人縦に並んで、合図とともにステージへと駆け上がった。

 ぱっと開けた視界には、どこまでも青い空が映る。

 観客のいないだだっ広い空間には、数人のライブスタッフが話し合いながらこちらを確認していた。