「いよいよ明日だね」
「なんか長かったような短かったような」
「密度は濃かったよね。絶対に無理だと思ってたのに、沢里と一緒に歌えるようになったんだから」
「それなー」
放課後の練習室。
沢里と二人で根詰めて歌うのもこれで最後かもしれない。
感慨にふけりながら明日への意気込みを口にして気合いを入れる。
「私、腹くくった。本番なにがあっても歌い切る。沢里は?」
「俺ももちろん、全力を尽くす。リンカの隣で歌うのにリンカに恥かかせるわけにいかないからな」
「まだそんなこと言ってるの? もし失敗しても恥なんて思わないし、カバーし合えばいいんだよ」
「そうだなあ」
沢里はそう言って目を閉じ、しばらく黙ってしまう。
集中しているのかもしれないと思い見守っていると、ふと声をかけられる。
「なあリンカ、腹くくったんだよな?」
「ん? うん」
「なにがあっても歌い切るんだよな?」
「うん。なによ急に」
目を開けた沢里はやけに真剣な表情でこちらを見つめる。
私もつられて口を引き結ぶ。
「なら、今のうちに言っておく。明日のライブ、お前の中学時代の部活仲間にチケット渡してある」
「え……」
