君の隣で歌いたい。



 授業を受けながら窓の外に広がる青空を眺め、リハーサルが行われているであろう会場を思い浮かべる。

 天気予報は快晴。

 暑さに負けないようにしっかりと準備しよう。

 ここ数日、緊張は刻一刻と高まっていったが、沢里と追い込み練習をする間は不思議と心が凪いでいた。

 ピアノとギターは問題なく弾けそうだ。

 今日は万全を期して放課後に何回か曲全体を合わせて、歌の調子がいいならそのままの状態で明日を迎えたい。

 それに沢里に話しておきたいこともある。

 穏やかに過ぎる時間が長く感じる。

 早く明日が来ればいいのに。そんなことを思うのは私が成長できたからだろうか。

 それとも早く皆に沢里の歌う姿をお披露目したいから?

 ぼんやりと他愛のないことを考えていると教科書の音読を当てられた。

 焦って立ち上がるとその拍子に椅子を盛大に倒してしまう。

 斜め後ろから沢里の笑い声が聞こえてきた。

 本当に緊張感のないやつ。

 向こうも私のことをそう思っているかもしれないけれど。