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 家で一人、母の作った夕食を黙々と食べる。

 その時間は家族のことを考えることが多い。

 ポテトサラダのじゃがいもは粗めに潰した方が好き。

 母の作る料理で一番おいしいと思う。

 小さい頃よく食卓に並んだ素朴な小鉢。

 柾輝くんの嫌いなミニトマトを食べてあげたら、それを見た母が怒って柾輝くんの口にミニトマトを突っ込んでいた記憶。

 母はもう忘れてしまったのだろうか。

 懐かしい味のポテトサラダを口に入れ、ふと考える。

 家族にはもうライブのチケットを渡してある。

 柾輝くんは残念ながら予定が合わなかったけれど、義父、母、透流さんは招待しようと思っていた。

 義父は「野外ライブなんて久しぶりだよ」と言ってにこにこしながら受け取ってくれた。

 透流さんには「息もれが治ったか確認させてもらおう」なんて言われてしまったが、観に来てくれるようでよかった。

 問題は母の反応だ。

 義父と透流さんがチケットを受け取るのを見て、同じように受け取ったまではよかったのだが。

「そう……」

 たったそれだけ言い残して自室に閉じこもってしまった。