君の隣で歌いたい。



 酸素が足りずに肩を上下させる私の姿に、沢里が問いかける。

「なあ、なにか不安に思ってることはないか?」

「はあ、はあ、そりゃあ当日のことを考えるとめちゃくちゃ不安だよ」

「そうじゃなくってさ、ライブに出るにあたってもやもやしてること。そういうの解消したらもっと心が軽くなって、歌いやすくなるんじゃないか?」

 そう言われて私は納得する。

 私の息もれはどうやら精神的な部分が大きく影響しているらしい。

 やるべきことを後回しにして、心が晴れていないことが歌に表れているのではないか。

 不安の原因には心当たりがある。

 私は大切なことからまた逃げている。

「まずは気になってることを片付けて、もう後は歌うだけって状態まで持っていこうぜ!」

「分かった。ごめん、そしたら今日の特訓はここまでで!」

「おう!」

 沢里に頭を下げてから、私は練習室を後にしてすぐに土井ちゃんに電話をする。

 この時間土井ちゃんはもう家にいるはずだ。

 数コール後に明るい声が聞こえてきた。