「空いてるよ! え、なになに? 遊びに行く?」

「ええと、その……。んーとりあえず空けておいてほしい!」

「オッケー!」

 上手く説明ができずに誤魔化す。

 土井ちゃんがあっけらかんとしているのが救いだ。

 土井ちゃんに【linK】であることを明かし、ライブに誘う。

 その一連の行動を私は躊躇していた。

 今日こそはと意気込んで土井ちゃんに話しかけるのはいいものの、笑顔を向けられると途端に言い出せなくなってしまう。

 この笑顔を怒りに染めてしまうかもしれない。

 嫌われるかもしれない。

 そんな悪い想像に支配されしまうのだ。

 また今朝も言えなかった。

 私は土井ちゃんの横に並び、傘に流れる雨の筋を黙って見つめた。

「どうしたー?」

「ううん、なんでもないよ」

 私はどうしようもなく臆病者だ。