今日の柾輝くんは様子がおかしい。

 体調が悪くてアンニュイな気分になっているのかもしれない。

 そういえば昔から具合が悪いとよくしゃべる性質(たち)だったことを思い出す。

「好きに歌え。俺も好きに歌うから。じゃあな」

「うん……」

 ライブを控えているのだから無理をさせるわけにはいかない。

 私は浮かない気持ちで通話を終えた。

 私の音楽に柾輝くんが必要ないなんてことはありえない。

 今までもこれからも。柾輝くんと作った【linK】という存在こそがその証明であるというのに。

「ライブに来てほしかったな……。まあ後でアーカイブ見てもらえばいいか」

 柾輝くんの忙しさは今に始まったことではない。

 ライブの後にダメ出しをされないように全力を尽くすのみ。

 そして、私が足を踏み出した姿をきちんと見せたい。

 そしてもう心配ないよと伝えたいのだ。

 柾輝くんは私の大切な家族だから。