私は小さく息を吸い、ゆっくりと話を始める。
「うん。柾輝くん、前に言ったでしょ。【linK】も私もどっちも私なんだって。ようやくそれが分かったの。私ね、音楽を続けてるつもりでいて、結局逃げてた。昔の自分からは目を背けて、新しい家族と上手くやれないのも私にはどうしようもないことだって思ってた。けどもうそういうのやめる。一回全部捨てて、歌ってみようと思う」
柾輝くんはゆっくりと相槌を打って聞いてくれた。そしてまたぽつりと言う。
「【haru.】のおかげだな」
「え? なんで分かるの?」
「分かるっつーの。俺にできなかったことをできるとしたらそいつしかいない」
柾輝くんにできなかったこと。
それがなんなのかを考えるがすぐには思いつかない。
柾輝くんはたくさんのことを私に教えてくれたのになぜそんなことを言うのだろう。
「ようやくお前には俺が必要なくなったんだって思ったよ」
「そ、そんなことない! なに言ってるの?」
