「ああ、そうだな」

 だからチケットの一枚は必ず土井ちゃんに渡す。

 そして言うのだ。私の歌を聴いてほしいと。

 手元で家族の分、土井ちゃんの分とチケットを数えていてふと思い立つ。

「ねえ、前の学校の人ってライブに呼ぶ?」

 きょとんとする沢里につられて私も口をつぐむ。

「んーいや、さすがにこのチケットは仲いい友達に配るよ。他の出演者も豪華だし、観たいやついると思うからさ」

「でもそれじゃあ沢里の実力を分からせられないよ」

「リンカの気持ちはありがたいけど、俺は別にそのことに固執してないしな。sawaの息子だってこと隠して歌えればそれでいい。それに、リンカと一緒にステージに立てるだけで胸いっぱいだよ。そう言うリンカは中学のやつら呼ぶのか? 俺的には呼んでほしいんだけど」

「そうするとチケット足りないしいいや」

「そっか。まあ当日中継も入るから、それで目に入るだろ」

「中継!?」