「そういえば、これ。サワソニのチケットな」

「チケット?」

 十枚綴りの紙を手渡される。チラシと同じカラフルなイラストが目を惹いた。

「そ、家族とか友達に配りたいだろ?」

「え?」

「えってまさかリンカ、誰も呼ばないつもりか?」

 失念していたという顔を隠せていなかったらしい。沢里の突っ込みに私は考え込む。

 義父はもしかしたら観たいと言うかもしれない。

 しかし母は? 透流さんは?

 未だに返信がない柾輝くんは、果たして来てくれるだろうか。

 そもそも私はちゃんと【linK】として歌うべきなのか。

 声でバレる可能性はあるものの、名乗らなければ誤魔化せるかもしれない。

「ねえ沢里、私って【linK】を名乗った方がいいと思う?」

「んー?」

 答えが分かりきった問いだ。沢里は【linK】と歌いたいだろう。しかし返ってきたのは予想と違う答えだった。

「どっちでもいいよ」

「へ?」

「どっちも同じリンカだから」

 それは聞いたことのある言葉だった。私ははっとして沢里を見る。