もう少し、というところまではいくようになった。
トレーニングは順調だ。まだ一曲まるまるは歌えないけれど、確実に結果が出ている。
ライブまでのひと月を歌に費やす。そのつもりで日々取り組んでいた。
しかし思わぬ邪魔が入ってしまい、私たちは盛大に頭を抱えることになる。
「赤点……!!」
「はは、まあ勉強してなかったからな!」
「笑いごとじゃないよ!」
そう、慌ただしく過ぎる時間の中で迎えた中間試験で、私は古文漢文の、沢里は数学の赤点を取ってしまったのだ。
貴重な放課後の練習時間を削り、図書室で泣く泣く参考書を開く。
透流さんに教えてもらった科目は問題なかった。英語、数学、物理化学。
しかし国語、特に漢文はノータッチだったのだ。母と透流さんの鬼の形相が目に浮かぶ。
私は机に顔を突っ伏して現実逃避に励むことにした。
