「姿勢が悪いのかもしれない」

「姿勢?」

「そう、あと腹筋の使い方」

「腹筋……」

 透流さんの言葉にそういえば最近筋トレを怠っていることを思い出す。

 息もれについて透流さんなりに調べてくれている。

 ありがたいと思いながらも音楽のことで透流さんの協力を得られるとはなんとも不思議な気分である。

 夕食を取りながら面と向かってひとつのことについて話すなんて以前までは考えられなかった光景だ。

 お互いが歩み寄った、と言えばいいのか自然にその形に収まったのか。

 とにかく透流さんと息もれについて話し合う時間は苦ではない。

 その代わり、母とは気まずくなってしまった。

 大きな喧嘩をしたわけではない。

 私が柾輝くんと会っていることを知られてからなんとなく空気が重いのだ。

 私が勝手に後ろめたいと思っているだけかもしれない。

 最近は柾輝くんと連絡を取っていないので堂々としていればいいのだが、見えない壁に阻まれている。

 おとうさんと透流さんと少しだけ仲よくなれたのに、今度は母と柾輝くんが遠のいてしまった。

 家族は難しい。私の永遠の課題かもしれない。