「嫌よ」

「ええっ!!」

「私はもう誰とも歌わない」

「もう……ってことは前に誰かと歌ってたのか?」

「う」

 思い切り断ったはずがカウンターをくらう。

「関係ないでしょ。ほくろのことは……言いたいなら言えばいい」

「【linK】、」

 そう突き放すと捨てられた子犬のような目をする。

 私は確信した。この人はほくろのことは言わない。そういうことができない人だと。

 そのまま黙って教室を出ると「俺は諦めないから!」なんで声が聞こえてきた。

 多分今日は運勢最悪の日だったんだろう。


 トン、トン、トン、


 頭の中でリズムが鳴る。


 それは扉を叩く音に似ていた。