「も、もしかしてシンガーソングライターのsawa さん、ですか?」
「はいはい」
「親父、こっちは前に言ったクラスメイトの五十嵐さんな」
「ははん、例の息もれ娘ね」
「息もれ娘……そうです。あの、今日はよろしくお願いします。これお土産……」
「お、サンキュー! 気がきくねー」
「親父!」
手土産のアップルパイを渡すとにこにこする沢里のお父さん――sawaさんを私はまじまじと見つめてしまう。
世界的に有名なアーティスト、sawa。
その幅広い音楽活動で国民的楽曲を多く生み出していて、テレビで彼の曲が流れない日はないほどだ。
最近はプロデュース側に回ることが多く、数々の実力派アーティストを世に送り出している。
予想どおりとんでもない人だった。
その場で棒立ちになっていると、sawaさんが顎でクイッとマイクを示す。
「じゃ始めようか」
